桜まち
思い出を胸に、タイさんから貰ったお煎餅を一枚取り出し、バリンと一口頬張った。
香ばしくて、とっても美味しい。
懐かしい昔ながらのその味に、自然と目じりが下がる。
お祖母ちゃんにも少しお裾分けしようっと。
マンションへ向かう道から方向転換して、お祖母ちゃんの家を訪ねることにした。
しばらく歩いて家の前に着き、呼び鈴を押したけれど出てこない。
商店街の集まりから、まだ戻っていないのかな。
合鍵で中に入っても、やっぱり留守だった。
何処に行ってるんだろう?
チラシの裏に読みやすいようにマジックで大きく【 タイさんから貰ったからお裾分けと 】書いてお煎餅をテーブルの上に少し置いておく。
母の仏壇にも手を合わせ、お煎餅を置いた。
「本当に旅行にでも行っちゃった?」
首をかしげて独り言を漏らし、そのまま家に戻った。
お茶を用意して、お煎餅をテーブルに広げてDVD鑑賞を始める。
いつ泣いてもいいように、ティッシュの箱も引き寄せておいた。
余談だけれど、お隣は留守のよう。
あ、けしてストーカー的な行為はしていませんからね。
ほら。
人が居ない雰囲気って、なんとなく解るでしょ?
ね、ね?