桜まち 
ひょんなことから





  ―――― ひょんなことから ――――





DVDも観終わり、外はすっかり暮れてしまっていた。
櫂君からは少し前に連絡があって、二一時頃には行けそうだというから、了解と返事をしておいた。

「さて。夜ご飯を軽く食べようか」

キッチンに立ち、冷蔵庫をあさっていると何やら外で怪しい物音がすることに気がついた。
ガタガタやガチャガチャといった、何かを無理強いしているような感じの音に泥棒かと警戒する。

玄関先にある傘とスマホを手にして、スマホの画面には一一〇を表示させておく。
万が一の時には、ボタン一つで直ぐに通報できるようにだ。

静かにドアをうすーーーーく開け、外の様子を伺ってみる。
ドアを開けるとすぐ、あからさまなガチャガチャという音が耳に飛び込んできた。
無理やりドアをこじ開けようとでもしている感じの音だ。

やっぱり、泥棒?

多分、まだ望月さんは帰ってきていないはず。
そんなお隣に空き巣?

泥棒に気づかれないように、もう少しドアを開けて隣を覗き見ると人影が見えた。
人影はどうやら男性のようで、ガタガタ言わせていたのを諦めたのか、今度は自らの鞄の中身をあさっている。

私は、傘を置きスマホを手に構える。
相手が男なら、力では敵いそうもないと判断したからだ。

鞄の中身をあさっていた男は、徐に大きく息をつくと僅かに体をこちらに向けて顔を上げた。
その顔には、はっきりと見覚えがあった。

あれ?
望月さん?

泥棒かと思った男性は、その部屋の主である望月さん本人だった。

何してんだろ?

泥棒ではなかったと判り、スマホをポケットにしまう。



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