桜まち
うどんを食べつつも、私はその間何度もお祖母ちゃんに電話をしてみたのだけれど、一向に繋がる気配がない。
どうしましょう?
「あのぉ。何処で失くされたかは、わかっているのでしょうか……?」
躊躇いがちに訊くと、全然と首を振りながらも、もしかしたら会社かもしれない、といった。
半分のうどんを完食した望月さんは、気がついた時にはもう鍵は無かった。と呟く。
その後、当然のことだろうけれど、二人の間に特に弾む会話もなく。
なんとも気詰まりな空白の時間が押し寄せてくるので、紛らわせるためにテレビを点けてみた。
バラエティー番組をつけて、互いに時々薄く笑いを零す。
仲がよければ、何かしら会話をしながらあーだこーだと言い合って笑ったりもできるんだろうけれど。
彼はきっと、まだ私がストーカーという思いを拭いきれていないだろうから、そんな仲のいい雰囲気はとても望めない。
ああ、気まずい……。
櫂君、はやく来てくれないかなぁ。
そしたら、今よりはもう少しまともな空気になりそうなんだけれど。
櫂くーん。
心の叫びを胸に秘め、新たな提案をしてみる。
「コーヒー、飲みますか?」
私が訊ねると、僅かに間をおいたあとに頷いた。
キッチンへ行き、そそくさとコーヒーの準備をしていると、躊躇いがちに望月さんから話しかけてきた。