コイツ、俺の嫁候補。
──約束の7時半。まで、あと1分。
あたしは急いで校舎の中に駆け込んだ。
「もー何でこういう時に限って抜けれなくなるのっ!」
クラスの文化祭実行委員に見付かり、さっきまで校庭で行われていたダンスに付き合わされてしまったあたし。
早く那央のもとへ行きたいのに、焦燥感だけが募っていた。
全速力で階段を上り、2年1組に着くと勢い良くバーンとドアを開ける。
「那央っ!!」
肩で息をしながら電気もついていない暗い教室を見渡すと、窓際に肘を掛ける那央が不満げにあたしを振り返った。
ギクリとしながらも急いで彼に近付く。
「遅い」
「ご、ごめん! ダンスに付き合わされて──ひゃっ!?」
暗くてよく見えなかったせいで、足元の椅子につまづきバランスを崩した。
転ぶ!
……かと思いきや、あたしの身体はしっかりと那央に受け止められた。
「わ、ありがと……!」
ふわりと香る、那央の匂い。
逞しい腕の感触。
それはあたしの五感を刺激して、心臓の動きを早める。