コイツ、俺の嫁候補。
ドキドキしながら目線を上げると、那央は少しだけ切なげな顔であたしを見ていた。



「なかなか来ないから、また避けられたかと思った」

「……ごめん、なさい」

「結構ショックなんだよ、好きな女に避けられるなんて」



……うん? 今、好きな女って言った?


サラッと言われすぎて、そのまま流してしまいそうになる。

キョトンとするあたしに、那央は優しい笑みを浮かべながら言う。



「この間、俺が樋田先輩に言った縁の魅力的なとこ。あれは全部、お前の好きなところだから」

「な、お……」

「奈々ちゃんのために先輩殴っちまうところも俺はカッコいいと思うし、あの強がりな華の悩みを聞き出してくれたところも尊敬する」



あたしの腕を掴む手に、力が込められて。

真剣で、熱い眼差しがあたしを射抜く。



「俺は、そんな縁が好きだ」



──一瞬、校庭から響く皆の声も、何も聞こえなくなって

目の前の那央の存在しか感じられなくなった。

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