コイツ、俺の嫁候補。
。:*°お父さんなんていらない
夏休みが明けてしばらくすると、あたしを見る周囲の目──特に他のクラスの女子の目が、鋭いものに変わっていた。
部活で那央と一緒に行動する時や、廊下で彼に会った時。
さらには那央のクラスの前を通っただけで、女子がヒソヒソと何かを話すのが聞こえてくるのだ。
どうやら、あたしと那央が付き合っていることが知れ渡り、那央に好意を抱いている女子はあたしを良く思っていないらしい。
まぁ当然だよね。
特別可愛いわけでもなければ、女の子らしくもないこのあたしが、彼女なんて座についちゃってるんだから。
「あーもうヒソヒソ声がやたら耳につく~」
「ごめん舞花」
「縁のせいじゃないよ! あのコらがやっかんでるのがいけないの」
教室を移動する最中、指で耳栓をする舞花に申し訳ない気持ちになる。
「振り向いてもらえないのは魅力がない自分のせいじゃない! 縁の文句言うなんてお門違いよ!」
「舞花さん、頭から角が……」
あたしは気にしないことに決めてるけど、舞花はこうやって怒ってくれるんだよね。
それだけで救われる。