コイツ、俺の嫁候補。
複雑そうな顔で笑みを作るお母さんは、あたしの嘘に気付いているのかもしれない。

やっぱり少し、罪悪感。



「健司おじさんによろしくね。……今日はごめんって言っておいて」

「いいのよ。また次の機会があるから」



ぎこちなく笑い合って、あたしは家を出た。

この間からずっとこんな状態。

嫌だな……お母さんとぎくしゃくするの。

あたしが再婚を認めればまた元通りになるって、頭ではわかっているけど心が追い付かない。




浮かない気持ちのままバイトしていると、電話していた同じバイトの大学生の先輩が、受話器を置いて嬉しそうな声を上げた。



「縁ちゃんラッキーだよ! 今の電話奥さんからで、『昨日廃棄になったケーキがあるから二人でどうぞ』って」

「えっ、本当ですか!?」



バックルームの冷蔵庫を覗くと、箱に入ったホールのショートケーキがちょうど二箱ある。



「わぁ、やったー!」

「一個ずつ持ってこう! クリスマスに奉仕してるあたしらへのご褒美だね」



イシシッと笑い合うあたし達。

片霧家への手土産になるなー。皆喜びそう。

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