コイツ、俺の嫁候補。
皆が思い思いに料理を食べていると、ビールでほろ酔い状態の片霧父が「それにしても」と口を開く。



「縁ちゃんのお母さんは偉いな。女手一つでここまで育てたなんて、たいしたもんだ」



感慨深げに言うお父さんに、台所から戻ってきたお母さんが頷いた。



「本当よ。今日だって縁ちゃんと一緒に過ごしたかったはずなのに、仕事なんてね」



──ちくり、胸が痛む。

今日はお母さんが仕事だから、一人のあたしを那央が誘ってくれたということになっていて。

嘘をついていることと、お母さんの気持ちを考えると、とっても後ろめたい。


でも、あたしは曖昧に笑ってごまかす。



「まぁ……しょうがないですよね」

「そうなんだけどね……。高校生にもなると一緒にいる時間が少なくなるし、こういう行事の時くらいはゆっくり一家団らんしたいじゃない」



子供達を見回した美魔女さんは、最後にあたしを見据えてふわりと微笑む。



「きっとお母さん寂しがってるだろうから、たまには甘えてあげるのよ」



その言葉は、あたしの胸にじわりと染み渡った。


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