コイツ、俺の嫁候補。
「……おい、なぜ背を向ける」

「だって……!」



向き合うのはなんか恥ずかしいんだもん!

壁の方を向いてベッドの端に縮こまるあたしに、那央は不満げなため息をついた。


それからしばらく沈黙。

那央、怒ってるのかな……。まさかもう寝た?

月明かりだけに照らされる部屋の中、同じ布団に包まり、すぐ隣に彼の存在を感じながら考えていると。



「……今日、嫌じゃなかったか?」



そんな那央の声が聞こえてきた。



「嫌?じゃなかったよ、全然。何で?」

「今色々悩んでるお前には、あの賑やかさはちょっと辛かったかなと思って」



あ……皆が仲良くわいわい盛り上がってたから、家庭に問題を抱えてるあたしに悪いと思ったのかな。



「全然大丈夫だよ。すごく楽しかった」

「そう? ならいいんだけど」



こんなふうに気遣ってくれて、那央は本当に優しいね。

今、お母さんにも言えないことを吐き出してもいいかな──。

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