コイツ、俺の嫁候補。
「あたしもまだ……」

「それはヤバいですね」



突然入り込んできた、じめっとした声。

調理室の空気と同化していたかのような存在感の薄さのネクラだ。



「将来何をしたいかっていうのは、子供の頃から考えとくべきですよ」



当然のように言い、眼鏡を曇らせながらお雑煮をふーふーするネクラ……なんかムカッ。



「じゃーあんたはもう決まってんの?」

「当然」

「何?」

「芸術科のある学校でデザインを学んだ後、ハンドメイド雑貨を売る会社を立ち上げます。まずはインターネットでの販売、いずれはちゃんとした店舗を構えて……」

「も、もうわかった。ありがとう」



本当に考えてたわ。

あそこまで語られるとちょっと気持ち悪いけど。


そんなあたし達のやりとりを見ていた奈々ちゃんは、苦笑しながらお上品にお餅を食べる。



「先輩達も、もう進路決めなきゃいけない時期なんだ……大変ですね」

「ねぇ……。あ、そういえば樋田先輩はもうじきセンター試験?」

「そうなんです。今、最後の追い込みをしてるみたいで」

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