コイツ、俺の嫁候補。
「弟妹が多いせいか、正義感強くなったみたいでさ。警察になるためには武術が必要だって親父が言ったら、さっそく知り合いのところで空手習い始めてたよ」

「あぁ、それで空手を……」



まだあたしがカセイクラブに入ったばかりの時、那央が言っていたことを思い出した。



「警察になるためにはまず試験に合格して、警察学校に入らなきゃいけない。そうすると多少給料も出るらしくて。早く家から出た方が家計が助かるってわかってるから、それを考えてのことでもあるんだ。
こんなこと話してんの、俺と那央だけだけどね」



そうなんだ……だから凪さんも就職してすぐ家を出たのか。

那央は『薄情なヤツだ』なんて言ってたけど、全然そんなことないじゃん。



「あいつはああ見えて結構成績いいし、何より努力家だから、俺は挑戦してみる価値はあると思ってるんだ。ただ、警察学校の試験はかなり競争率高いし難関だから……」

「それで迷ってるんですか?」

「たぶんね。選択する時が迫ってるから、本当にこれでいいのかってためらってるんだと思う。でも、きっと原因はそれだけじゃない」



真面目な表情になった凪さんは、あたしの目をまっすぐ見て言う。



「君だよ」



ドクン、と心臓が音を立てた。

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