コイツ、俺の嫁候補。
「あ、たし……?」

「警察学校は全寮制で、高卒だと10ヶ月はそこで訓練しなきゃいけない。ここから一番近い学校でも高速バスで片道三時間だ。時間もお金も掛かるし、なかなか帰ってこれなくなる。つまり──」

「遠恋になる、ってことですか?」

「……そういうこと」



ずしん、と重い鉛みたいなものが胸に落とされたような気がした。


那央と、今みたいに会えなくなる──

その可能性はいくらでも考えられたのに、あたしは安心しきっていた。

“俺はずっとお前のそばにいるから”

という、あの言葉に。



「俺の先輩にも警察官の人がいるから知ってるんだけど」

と、一気に滅入るあたしを気遣いつつ、凪さんはゆっくり話してくれた。


とにかく訓練が厳しくて、土日も毎週休めるわけじゃないらしい。

外泊も実家以外は禁止で、近くに家がある人はいいけれど、遠方の人は帰れるのはお盆休みや正月くらいなのだそう。


さらに辛いのは、携帯も週末まで使用を禁止されるということ──。

離れたら連絡くらいは常に取り合いたいのに、それすら制限されてしまうなんて。

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