コイツ、俺の嫁候補。
「……かなりきついだろ? 卒業しても、最初の数年は地元以外の場所に配属されるのが一般的らしいし、かなり多忙で地元に帰ってる暇もないんだって」



ということは、ただ10ヶ月我慢すればいいってわけじゃないんだ……。

むしろ、それまでずっと付き合っていられるのかどうかもわからない。


もし、どちらかの気持ちまでもが離れてしまったら……?

そう考えるだけで、胸が引き裂かれたみたいに痛くなる。


──『どうせ卒業したら離れるんだしさ』


那央のクラスの女子が言っていたのは、このことだったんだ。



「だから、縁ちゃんが引き留めたのかなって思ったんだ。でも君が知らなかったってことは、那央自身が離れたくないと思ってるんだろうな。
あいつにとって縁ちゃんは、昔からの夢を揺らがすくらい、大きな存在ってことなのかも」



そう言って、凪さんは切なくも優しく微笑む。

本当にそうだとしたら、あたしは喜んでいいのかもしれないけど。



「でも、那央はあたしにそんな相談はしてくれない……」



膝の上に置いた手を、ぎゅっと握りしめた。

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