コイツ、俺の嫁候補。
「何で言うんだよ、あいつ……」

「あたしが教えてって言ったの!」



昨日凪さんから聞いた経緯を話すと、那央はバツが悪そうな顔をした。



「何で……そんな大事なこと、話してくれなかったの?」



あたしは彼女なのに──。

急激に切なさが襲ってきて、目頭が熱くなる。

目を伏せた那央は、申し訳なさそうに「ごめん」と言った。



「ちゃんとどうするか決めてから話そうと思ってたんだよ。
離れるかもって知ったら、お前は絶対悲しそうな顔するだろうから……今みたいに」



冬の冷気で冷えた手が、そっとあたしの頬に触れる。



「お前にこんな顔させたくなくて、先延ばしにしてたんだ。……悪かった」

「那央……」



そんなふうに考えてのことだったの?

愛しさと切なさで胸がいっぱいになる。

頬にあてがわれた那央の冷たい手に、あたしも自分の手を重ねた。



「……迷ってるの?」

「あぁ……難しい賭けだからな。でもずっと持ってた夢だから、諦める方がもっと難しいかも」



嘲笑する那央の一言に、ツキンと胸が痛んだ。

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