コイツ、俺の嫁候補。
那央の想いは、いつもまっすぐで強い。

それはわかっていたはずなのに。

少しだけ、ほんの一瞬でも、警察官になる夢を諦めてくれたら……と思ってしまった自分が情けない。



那央は迷ってるんじゃない。

答えはもう最初から決まっているんだ。

ただ、あと一歩が踏み出せないでいるだけ。

本当なら、あたしがその背中を押してあげなきゃいけない立場なのに──。



「もし合格したとして……縁は、俺が帰ってくるのを待っていられるか?」



真剣なその眼差しを、しっかりと受け止めることが出来ない。


あたしもずっと一緒にいたい想いは確実にある。

でも、離れてしまうのが怖い。

会いたい時に会えないことが怖い。

気持ちの糸が切れてしまわないか、怖い──。


あたしはいつからこんなに臆病になってしまったのか。



「……わかんない」

「縁……」

「わかんないよ……!」



こんなに誰かを好きになったことがないから想像つかないよ。

大切な人が離れてしまった時、どうなるかなんて──。


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