コイツ、俺の嫁候補。
無意識のうちにやってきたのは、那央と初めてデートした時に来た河原。
自転車を停めて、まだあちこちに雪が残る河川敷にしゃがみ込む。
……あの時はちょうど雨上がりで、綺麗な虹が掛かってたよね。
今はもう暗くなり始めていて、景色はよく見えないしすごく寒い。
白い息を吐き出すと、足を抱えた腕に顔を埋めた。
──どうしようもなく寂しい。
那央も、舞花も、奈々ちゃんも、お母さんも……
なんだか手の届かない、遠い所にいるような気がする。
将来の夢も、大好きな人も、大切な家族も
ちゃんと自分の手で掴めていないのは、あたしだけじゃない。
顔を上げて周りを見回しても、闇が広がってきた冬空の下には、誰もあたしを気に留める人なんていない。
今──あたしは一人なんだ。
一人でも平気だってずっと思ってきたけど、そんなの間違ってた。
本当に一人になったことがないから、勘違いしていただけ。
あたしはいつも誰かに守られて、支えられて生きていたんだから。
今頃気付くなんて……自分が恥ずかしい。
「……っく」
大事な人達があたしから離れていくような気がして、言い様のない孤独感に囚われる。
落ち着くまで、あたしは一人涙を流していたのだった。