コイツ、俺の嫁候補。

お母さんが残念そうに笑う。

最近行けてないから行きたい気はヤマヤマだけど、どうしようかな……。

悩むあたしに、というより那央に、お母さんはこんな提案をする。



「もしよければ、那央くんも一緒に行く？」



えぇぇ、那央も！？



「ちょっとお母さん！　いくら何でも他人のおばあちゃんに合わせるってのは──」

「俺も行っていいんですか？」



あたしの言葉を遮る好意的な声に、目が点になる。



「行く気！？」

「そうだよ。前から思ってたんだ、縁のばあちゃんに会ってみたいって」



屈託のない笑顔を見せる那央に、あたしはぽかんとしたまま。

ヤツはその笑顔を今度はお母さんに向けた。



「あ、もちろんお母さんにも会いたかったんですけど」

「やぁね、口が上手いんだから～」



そう言いながらも満更でもない様子のお母さんは、車から降りてさっそく後部座席に乗った荷物を片付け始める。


うそ……本当に行くんだ。

彼女の家族に会いたいなんて、自分から買って出る人はあんまりいないよね？

やっぱり那央って変なヤツ。

……そこが好きなんだけど。