コイツ、俺の嫁候補。
頭を何かで殴られたかのような衝撃を受ける。

うそ……嘘でしょ?

冗談はやめてよ。



「……おばあちゃん? わからないの?」

「え?」

「あたしだよ、縁! 縁だよ!? 何で……忘れちゃったの!?」



思わず叫んでおばあちゃんの腕を掴もうとすると、おじさんやお母さんに制止される。

それでも、あたしは沸き上がる涙と感情を抑えられない。



「落ち着いて、縁ちゃん」

「縁……!」

「ねぇ、おばあちゃん!!」

「あぁ……やめとくれよ。怖い、怖い……!」



怯えたような目であたしを一瞥し、ベッドの隅に逃げるように身体を縮めるおばあちゃん。

その姿を見て、あたしの身体から一気に力が抜けていく。


本当に……あたしのことがわからないんだ。

どうして?

あんなにたくさん可愛がってくれたじゃん。

たくさん笑って、抱きしめてくれたじゃん──!



「縁……」



まばたきもせずに涙を流すあたしの肩に、那央がそっと手を置く。

でも、その感覚がない。

周りの皆の存在すら感じられなくなるほどショックで。


気が付いた時には、あたしは部屋を飛び出していた。


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