コイツ、俺の嫁候補。
どこをどう走ったのかわからない。
皆が呼び止めていた気がするけど、今はどうでもいい。
走りながら頭に浮かぶのは、幼い頃に一緒に遊んでくれたおばあちゃんの記憶。
お手玉や、編み物を教えてくれたり
近所のお祭りや、畑に連れていってくれたり
泣き止まないあたしをおんぶして、夜道を散歩してくれたり──。
思い出せばキリがない。
たくさんたくさん溢れてくる、おばあちゃんの笑顔と温もり。
あたしはこんなに覚えているんだよ?
あたし、たった一人のおばあちゃんの孫なんだよ?
それなのに、どうして忘れちゃうの……!
「ひどいよぉ……!」
こんなに、大好きなのに。
あたしのことをまるで敵のように見て、怯えて逃げようとする姿が目に焼き付いている。
おばあちゃんまで、あたしから離れていってしまう。
大切な人が皆、遠くなっていく──。
どれだけ寒くても、凍ることのない雫を落としながら、綺麗な夕陽に染まる道を走る。
そんなあたしの腕が、突然誰かに掴まれた。