コイツ、俺の嫁候補。
俯いてぽろぽろと涙をこぼすあたしは、ただのワガママな子供みたい。



「おばあちゃんは、ずっと昔から一緒にいたのに、あたしのことわからなくなっちゃったんだよ? 人の記憶とか絆とかって、そういう脆いものなんだよ……」



おばあちゃんは病気なんだから仕方ないと思う。

だけどそれでも、大好きな人の中から自分の存在がなくなるって、想像以上に辛い。



「気持ちが離れたら、すぐに必要じゃなくなる。
お母さんだって、おじさんがいればあたしなんていなくてもきっと──」

「それは違う!」



突然、那央ではない人の声が響いて、あたしの肩がビクンと跳ねた。

顔を上げると、那央の後ろにぎゅっと眉根を寄せた健司おじさんが立っている。

お母さんも、泣きながらあたしを見ていた。



「それは違うよ、縁ちゃん」



もう一度、今度は諭すように声を抑えて言うおじさん。

こんなに険しい表情、初めて見る。

あたしのそばに歩み寄ったおじさんは、ズボンが汚れるのも構わず地面に膝をつき、あたしの両手をそっと握った。

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