コイツ、俺の嫁候補。
「トメさんのことは仕方ないって、本当は君もわかってるよね?」
優しい声色で言われ、あたしは小さく頷く。
すると、おじさんはポロシャツの胸ポケットから何かを取り出して、あたしの手に握らせた。
「これ……?」
「トメさんがずっと作っていたものだよ。『孫にあげるんだ』と言って。自分で渡すって言うから、僕も内緒にしてたんだけど……」
──あたしに?
開いた手の上にあるのは、かぎ針で編んだらしい桃色の花がついたヘアゴム。
あぁ、見覚えがある。
昔、おばあちゃんが作ってくれたものと一緒だ……。
「認知症は、つい昨日まで覚えていたことを突然忘れてしまうこともあるんだ。自分がやっていたことも、家族の名前も」
おじさんはあたしを見上げて、優しく微笑む。
「でも昔の記憶は残ってることが多いんだよ。たぶんトメさんは、幼い頃の縁ちゃんが今もそのままの姿だと思い込んでるんじゃないかな。だから、成長した君を見ても誰だかわからなかったんだと思う。
君の存在が、完全に記憶から消えてしまったわけじゃないんだよ」
優しい声色で言われ、あたしは小さく頷く。
すると、おじさんはポロシャツの胸ポケットから何かを取り出して、あたしの手に握らせた。
「これ……?」
「トメさんがずっと作っていたものだよ。『孫にあげるんだ』と言って。自分で渡すって言うから、僕も内緒にしてたんだけど……」
──あたしに?
開いた手の上にあるのは、かぎ針で編んだらしい桃色の花がついたヘアゴム。
あぁ、見覚えがある。
昔、おばあちゃんが作ってくれたものと一緒だ……。
「認知症は、つい昨日まで覚えていたことを突然忘れてしまうこともあるんだ。自分がやっていたことも、家族の名前も」
おじさんはあたしを見上げて、優しく微笑む。
「でも昔の記憶は残ってることが多いんだよ。たぶんトメさんは、幼い頃の縁ちゃんが今もそのままの姿だと思い込んでるんじゃないかな。だから、成長した君を見ても誰だかわからなかったんだと思う。
君の存在が、完全に記憶から消えてしまったわけじゃないんだよ」