コイツ、俺の嫁候補。
「お母さん……ごめん、あたしのせいで……」

「何で縁が謝るのよ」



まったく責める気のないお母さんの優しい声に、みるみる罪悪感が沸き上がる。

再婚には否定的だったくせに、いざとなると後悔するなんて都合が良すぎるよ。


自分にひどく落胆していると、あたしの手を握る力が強められた。



「そう、縁ちゃんは何も間違ってない。君が賛成しないのも、僕は当然のことだと思ってる」

「でも、それはただのワガママで……」

「ワガママなのは僕の方だよ。どうしても君達と生きていきたいって願ってるんだから」

「……どうして、そこまで?」



単純な疑問を投げ掛けると、おじさんは一呼吸置いて再び話し始める。



「僕が前、結婚を約束してた彼女が亡くなったと言ったことを覚えてる?」

「……うん」

「あの時の僕は本当に魂が抜けたみたいでね。何のやる気も、生きていく気力すらなくなりそうで、何もかも投げ出したくなってた」

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