コイツ、俺の嫁候補。
いつの間にか太陽は顔を隠していて、広がってきた闇がおじさんの表情にも影を落とす。

あたしはそれをじっと見つめながら、耳を傾けた。



「そんな時にちょうど縁ちゃんが産まれた。君のお父さんから報告を受けて、僕は久しぶりに胸を弾ませながら病院へ走ったよ。そこで、まだ産まれて間もない君を、二人は僕に抱かせてくれたんだ。

その瞬間、『子供は最低二人は欲しいね』って話してた彼女の声とか、二人で描いてた未来が次々と蘇ってきて……涙が止まらなかった」



おじさんの瞳から透明な雫がこぼれ落ちる。


きっと幸せな未来を思い描いていたのに、それが一瞬で消えてしまったんだ。

どれだけ悲しくて、辛いだろう。

今のあたしの寂しさなんて、きっと比較にならない。



「でも、同時に僕はものすごいパワーをもらったんだ」

「え……?」

「何よりも弱い君を、この腕に抱き上げるのは少し怖かったけど。すごく軽いのに、ちゃんと“生きてる”って重みを感じた。
こんなに小さいのに、この子は頑張って生きてるんだって思ったら、僕も生きなきゃって力が沸いて来たんだよ」

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