コイツ、俺の嫁候補。
おじさんの瞳が、また涙でゆらゆらと揺れる。

すぐに満杯になったそれは、大粒の雫となってこぼれ落ちた。



「縁ちゃん──!」



掴んでいたあたしの腕を引き寄せ、力一杯抱きしめるおじさんに目を丸くするあたし。

でも、子供みたいに泣く感情豊かなおじさんがなんだか愛おしく思えて、泣きながらもクスッと笑ってしまった。


お母さんも手で口元を覆ってしゃくりあげている。

安心したように微笑む那央も、ちょっぴり目が赤くなっていた。



正しいかどうかはわからないけど、ようやく答えを見付けられた。

家族になるって、本当に難しいこと。でも。



「おじさん、せっかくバレンタインのチョコ作ったのに潰れちゃったかもよ」

「えっ」

「その前に、あんだけ走ればもうめちゃくちゃじゃねーの」

「……那央のイジワル」

「愛情がこもってれば何でもいいわよね?」

「そうだ、さっちゃんの言う通り!」



わだかまりが綺麗になくなって、今自然に笑い合えているから、きっとこれが正解なんだと思う。

この瞬間から築いていこう──新しい絆を。


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