コイツ、俺の嫁候補。
──その日の夜、あたしはリビングでスマホ片手に那央と話していた。
あれから那央を家まで送り、その別れ際に『夜、電話する』と言われたのだ。
今お母さんはお風呂に入っているから、気兼ねなく話せる。
「今日はありがとね」
『いや、むしろ俺邪魔者だったよな』
「そんなことないよ。那央がいてくれたから、言いたいこと言えたんだと思う」
『ほんと……ごめんな。縁があそこまで寂しい想いしてたなんて思わなかった』
──皆、あたしから離れていっちゃうんだよ
あの時、心に溜めていた不安をぶちまけてしまった。
今になってみればそんなことないってわかるのに、最近のあたしはマイナス思考が強くなってたみたい。
「あたしこそごめん。再婚のこととか進路のことでネガティブになってて、そこにおばあちゃんのことが重なったから、冷静でいられなくなっちゃって……」
左手で遊ばせていた、おばあちゃんの手作りのヘアゴムをそっと握りしめる。
「あんなこと言うつもりじゃなかったの。那央を責めるようなこと……」
『でも、あれは本心だろ?』