コイツ、俺の嫁候補。
言葉が喉に詰まる。


“遠くに行こうとしてるじゃん……ずっとそばにいるって言ったのに”

そう、那央の言う通り、あれは本心だ。



『やっぱり、離れるの不安か?』



黙ったままのあたしに、那央は優しく問い掛けた。


まったく不安がないだなんて言えない。

でも、それを口にしたら余計気持ちが沈みそうだし、何より那央が傷付いてしまいそうで。

自分に言い聞かせるように、「大丈夫」と答えた。



「あたしは大丈夫だから……那央は自分のやりたいことをやって? 後悔しないように」



また会話が途切れる。

きっと、那央は考えているんだろう。

でもあたしは、彼が次に何を言うかわかってる。



『……縁』

「ん?」

『俺、やっぱり警察官目指そうと思う』



──うん。そう言うと思ったよ。



『今日健司さんを見て、人として格好いいなって思ったんだ。守りたいものがある人ってすげーなって。俺も、そういうもののために強くなりたいんだ』



うん、わかってる。

まっすぐな那央の信念、ちゃんとわかってるよ。

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