コイツ、俺の嫁候補。
そしてあの時、先輩はあたしに王子様スマイルを浮かべながら言ったっけ。

『牧野さんの右ストレートの迫力は一生忘れないよ』って。



「びっくりしたなぁ、去年縁先輩に殴られたって話聞いた時は」

「そ、その節はどうもすみませんでした……! 大好きな彼氏のキレイなお顔に青アザ作ってしまいまして……」

「いえ! 本人も『あれで目が覚めた』って言ってましたから。私も嬉しかったです、縁先輩の気持ちが」



ニコッと微笑む奈々ちゃんに、ホッとするあたし。



「でも、先輩も今年は大変そうですね?」

「えっ、何が?」

「アレですよ~。見てください」



奈々ちゃんが指差す方には、あたしが作った酢めしをうちわでパタパタと扇ぐ那央。

そしてその周りには、新入生の女子達が群がっている。



「え~片霧先輩って7人兄弟なんですかぁ!?」

「そ。だから将来子供が出来たらいいパパになると思うよ、俺」



きゃあ!と黄色い声が上がり、あたしは思いっきり眉間にシワを寄せる。

那央は普通に話してるだけかもしれないけど、やっぱり気に食わん!

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