コイツ、俺の嫁候補。
「あ、俺らの部屋遊びに来てくれても全然オッケーだから。行く?」

「やっ、ちょっと!」



突然手を取られそうになって身構えると、逆方向から腕を引かれた。

その瞬間、ふわりと大好きな香りが鼻をかすめる。



「あ……!」



見上げると、藤丸先輩並に怖~い顔をした那央がいた。

大学生らしきチャラ男も、その形相に少し怯む。



「コイツ、俺のなんで」



不機嫌さ丸出しの声で一言言い放つと、那央はあたしの手を取って走り出した。



「那央っ……」

「やっと見付けたと思ったらコレだもんな……あいつムカつく」



走りながら笑ってしまった。

あたしを探してくれてたことが嬉しくて、繋いだ手にもいつも以上にドキドキする。


王子様に助けられたお姫様気分で、お城もどきのロビーを抜けると、彼はテラスに続く扉を開けた。



「わ……いい眺め」



目の前に北海道らしい広大な草原が広がり、遠くの山に夕陽が沈んでいく。

ちょっぴり寒いけど、澄んだ空気も美味しい。

誰もいないテラスの柵のそばまで来ると、那央はあたしを見て一つ息を吐いた。

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