コイツ、俺の嫁候補。
「縁も女なんだもんな……」



しみじみと漏れた一言に、あたしはピクリと片眉を上げる。



「なんか失礼じゃない?」

「そういう意味じゃなくて。ちょっと離れただけで心配になるなぁと」



ムッとしてたのが一変、キョトンとするあたし。



「余裕ぶってたけどダメだな。縁がクラスの男子と話して笑ってるとこ見かけるだけで、本当は妬いてたし」

「……うそ」

「縁のこと信じてないわけじゃなくて、ただ不安になるんだ」



那央も、あたしと同じ気持ちだったの?

きゅうっと胸が締め付けられる。



「かっこ悪ぃ……」



ぽすん、とあたしの肩に力無くおでこを乗っける那央。

……やばい、可愛い。

ドキドキしながら、ふわふわの髪の毛を撫でていると。



「……その四、キスマークをつけておく」



少しだけこっちに顔を向けた那央は、突拍子もないことを言い出した。



「は?」

「つけていい? 男除けのために」

「はぁぁ!?」

「今がまさにその時でしょ」



落ち込んでいたはずの那央はイタズラっぽく口角を上げ、あたしの首にするりと手を回した。

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