コイツ、俺の嫁候補。
『健司くんが言うには、それは難しいらしいわ。おばあちゃんの場合、体力も弱ってるから……数日から、もって1、2ヶ月じゃないかって』



──う、そ……

嘘だ。

だって、この間まであんなに元気だったんだよ?

信じられるわけないじゃん……!



『とにかく行ってくるわね。また連絡する』



呆然とするあたしにお母さんは口早に告げて、電話は切れた。



「どうした、縁? ばあちゃんに何かあったのか?」



あたしの肩に手を置き、怪訝そうな顔で那央が問い掛ける。



「……肺炎を起こして、病院に運ばれたって」



声が震える。

とてつもない恐怖感が、あたしを支配する。



「今は落ち着いてるみたいだけど……もう長くないって。どうしよう、おばあちゃんが……!」



おばあちゃんが、死ぬかもしれない。


近いうちに、顔を見ることも、触れることも出来なくなる。

大事な存在が、また一人この世から消えてしまう──。

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