コイツ、俺の嫁候補。
怖い。いやだ。

スマホを落としそうになりながら、震える手をぎゅっと握りしめた。

涙が溢れ出して、那央も、周りの皆も見えなくなる。



「──縁」



そんなあたしをしっかりと支えてくれるのは、やっぱり那央だった。

あたしの両肩に手を置き、まっすぐ目を見つめて言う。



「今から病院行こう」

「っ、でも……」



今すぐ駆け付けたい想いは確実にある。

けど、弱っているおばあちゃんをこの目で確かめるのは怖い。



「お母さんには待ってろって言われたし、今は大丈夫だって──」

「そんなのわかんねぇだろ!」



ぴしゃりと言い放たれた声に、あたしはビクッと肩をすくめて押し黙る。



「いつ何が起こるかわからない。確実に明日が来る保証はないだろ。もう会えなくなるかもしれないんだぞ?」



……那央の言う通りだ。

容態が急変したっておかしくない。体力が衰えているなら尚更。



「どうする?」



落ち着いた那央の問い掛けに、あたしは涙を拭って「……行く」と頷いた。

後悔してからじゃ遅いんだ。

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