コイツ、俺の嫁候補。
「何してるの?」



不可解な行動に少し眉をひそめて聞くと、振り向いた那央はあたしにこう言った。



「縁はその自転車置いてくるついでに、ワンピースに着替えてこい」

「え!?」

「ほら、あのお姫様みたいな白いワンピースだよ」



それって、初デートの時に着てたやつ?



「何でこんな時に!?」

「ただの思い付きだけど……
もしかしたら、ばあちゃんの夢叶えてやれるかもしれない」



おばあちゃんの夢って、まさか──。

真剣な瞳であたしを見据える那央。

彼の考えていることが、なんとなくわかった気がする。



「とにかく早く家に行け。先輩には俺が案内して、お前の家に向かうから」

「……わかった」



あたしは焦燥感を抱きながら自転車に乗り、アパートまでの道を全速力で駆け抜けた。


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