コイツ、俺の嫁候補。
あたしは左手の薬指につけられた、シロツメクサの指輪を見つめて気持ちを落ち着かせる。



「……今から、お前は俺の嫁な」



あたしの頭に、華ちゃんが作った花かんむりをそっと乗せて言う那央。

あたしはこくりと頷いて、カーディガンを脱いだ。



那央は、おばあちゃんにあたしの花嫁姿を見せてあげようとしているんだ。


オフホワイトのワンピースは、純白のウェディングドレスに

花かんむりはティアラに──

現実と妄想の区別がつかないおばあちゃんの目には、あたしが花嫁みたいに映るかもしれない。

もしかしたら、制服のブレザーを着た那央も、タキシード姿の新郎のように見えるかも。


伝わるかどうかはわからないけど……


“縁の花嫁姿を見るのが今一番の夢なんだよ”


ほんのひと時でもその夢を叶えるために、仮の花嫁を演じよう──。

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