コイツ、俺の嫁候補。
「なっ、凪さん!!」

「あー縁に何してんだ! セクハラ反対!」

「抱きついてる翔こそ立派なセクハラだぞ」



あたしの腰にギュッと抱きつく翔くんは可愛いから許せるけど、凪さんはいただけない……!



「バカなことしてないでさっさと準備する!!」



固まるあたしから、怖い顔をした華ちゃんが二人を引きはがしてくれた。

その様子に美雨ちゃんがケラケラと笑う。


相変わらず賑やかな片霧家は、いつでもあたしを笑わせて、元気をくれる。

でも、春からはこの家にも当分お邪魔出来なくなるんだなぁ……。

やっぱり少し寂しい。



今日家にいるのは子供達だけで、凪さんが腕によりをかけてくれた料理をテーブル一杯に用意すると、皆でその周りに座った。

那央はまだ帰ってこない。



「まだかなぁ……」

「今メールしといたよ」

「ったく、料理が冷めちまう」



口々に言う皆が、次第に無言になる。

一瞬静寂に包まれた時。



「もうすぐ、こうやって那央がいない生活になるんだね……」



美央ちゃんがぽつりと漏らした声が、やけに大きく響いた。

< 294 / 314 >

この作品をシェア

pagetop