コイツ、俺の嫁候補。
「……寂しくなりますね」



と、目線を落とす遼くん。

珍しく感情がこもったその言葉に、一気に切なさが襲ってくる。



「いつも、なんだかんだ言って僕達のこと面倒見てくれてましたから……」

「あいつが一番、家族のことが好きなのかもしれないな」



凪さんが穏やかに言い、再び沈黙すると、しばらくして鼻をすする音が聞こえてきた。

……翔くん?

膝を抱えて、泣いている。



「う……うわぁぁぁん!」

「翔……」



声を上げて泣き出した翔くんに皆が驚き、そして涙ぐむ。



「もう、泣かないでよ! あたしだって我慢してんだから……っ!」



強い口調で言う華ちゃんは、唇を噛みしめて必死に涙を堪えていた。

あたしもつられて目頭が熱くなる。


──那央が離れて寂しい想いをするのは、あたしだけじゃない。

この子達はあたしなんかより遥かに長く那央と一緒にいて、それが当たり前だったんだから。

急にいなくなるなんて、もっとずっと寂しいよね。

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