コイツ、俺の嫁候補。
しんみりした空気の中、凪さんが優しく微笑んで口を開く。



「寂しいよな。でも那央だってきっと同じだよ。それでも自分の夢を叶えるために行くんだから、俺らは応援してやろうぜ」



翔くんと華ちゃんは涙を拭い、皆が頷いた。

凪さんの言葉はなんだかいつも温かみがあって、相手を納得させる力があるなぁ。


……と感心していたのに、凪さんはなぜか急にタコみたいに口を突き出す。



「ていうか、俺が家出る時は誰も泣いてくれなかったくせに」



いじける凪さんを、冷めた目で一瞥する弟妹達。



「……だって、凪にぃはいつでも会えるし」

「ご飯作ってくれなくなること以外は特に困らないし」

「セクハラ大王だし」

「お前ら! もっと兄ちゃんも敬ってくれ!」



今度は凪さんが泣き、皆と一緒にあたしも目尻に滲む涙を拭いながら笑った。

本当に素敵な兄弟だね。

凪さんの言う通り、那央だって寂しいだろうな。


……あ、そうだ。いいこと思い付いた。



「ねぇ皆、ちょっと提案があるんだけど──」


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