コイツ、俺の嫁候補。
感動的な卒業式の後は、各クラスごと謝恩会があって、那央とはあまり話せなかった。
初めて見たスーツ姿は、めちゃくちゃカッコ良かったけどね。
警察学校では入校式の一週間前から寮生活が始まるらしい。
お互い引っ越しの準備で忙しく、デートもままならない春休みを過ごした。
それでも、心だけじゃなくて身体も結ばれたことで、前よりもっと愛が深まった気がする。
二人で一つになった──本当にそんな感じ。
でも、離れることに不安はなくなってきても、寂しさは強まるばかり。
那央が旅立つ当日、それはピークに達していた。
「んじゃ、行ってくるわ」
バスターミナルで、大きなバッグを持った那央は、まるでいつもの学校にでも行くかのような軽い口調で告げた。
友達とは昨日までに会っておいたらしく、今見送りに来てるのはあたしと片霧家の皆だけ。
「しっかりな。気合い入れて頑張れ」
「帰ってこれる時はちゃんと来なさいよ」
別れを惜しむ両親二人。
「わかってる」と頷いた那央に、凪さんが近付く。