コイツ、俺の嫁候補。
パタン、とアルバムを閉じた那央は、大きく息を吸い込み、瞳をキラキラさせながら笑顔を見せる。



「ありがとな。めげそうになったら、これ見て元気もらうわ」

「うん」



あたしもなんとか涙を堪えて必死に笑った。

それだけで精一杯で、何も気の利いた言葉を掛けてあげることが出来ないや……。


すると、バスの運転手さんが乗車する人のチケットを確認し始める。

あぁ、本当にこれで一時のお別れなんだ……。

沸き上がる寂しさをぐっと堪えた、その瞬間。



「──ひゃっ!?」



手首を引かれて、あたしは那央の胸の中に飛び込んだ。



「な、那央っ、皆見てる……!」

「見せ付けてやりゃいいよ」



耳元で囁かれる、大好きな声。

嬉しさと、切なさと、恥ずかしさと……様々な感情も一緒に、ぎゅうっと強く抱きしめられる。



「ありがとう、縁。俺にいろんなモノをくれて。……好きになってくれて、ありがとう」

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