コイツ、俺の嫁候補。
──だめ……泣くな縁。

今日は笑って見送るって決めたんだから。


しばらく連絡も取れない。

次はいつ会えるのか、まったくわからない。

でも今日は終わりじゃない、新しい未来へのスタートの日なんだから。


那央の肩に顔を埋めて、こくこくと頷く。

そんなあたしの髪を撫でながら、彼はしっかりとした声で言った。



「約束、絶対守るから」



あの日、シロツメクサが揺れる河原で交わした約束を思い出す。

彼の背中に回した手に、力を込めた。



「……うん、信じてる」



恋しい時に会えなくても、声が聞けなくても、あの魔法の言葉をずっと支えにしていくよ。


少し身体を離したあたし達は、もう周りの目も気にせず、再び引き寄せ合って唇を重ねた。



世界中の人に呆れられてもいい。

愛しい気持ちをさらけ出したって、何も悪くない。

時間は待ってくれないから。

すぐに過ぎていってしまうその瞬間、その時の気持ちを、これからも大事にしていこう。



──二年間という短い時間で、たくさんのかけがえないものを得たあたし達は、笑顔で手を振って別々の道に進み始めた。




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