コイツ、俺の嫁候補。
「でも那央くんなら安心して任せられるわ。ねぇ、健司くん?」

「そうだな。警察官は家を空けることが多いって言うから、縁ちゃんが寂しくないか、それだけが心配だけど」



礼服がバッチリ決まった健司おじさんは、いまだにそれが気掛かりらしく、あたしは笑ってしまった。



「大丈夫。那央のことを家で待っててあげられるだけで幸せだから」



離れていた5年間のことを思えば、なんてことない。

どんな困難も、那央とならきっと乗り越えられる。


三人で笑い合っていると、介添人の女性スタッフに声を掛けられた。

いよいよ、この扉の向こうの教会で人前式が始まる。



音楽が鳴り、大きな扉が開かれた。

こちらを見た列席者が小さく声を上げる中、

緊張でいっぱいのあたしの前にお母さんが立ち、頭の上のベールに手を掛ける。


これまで育ててくれたお母さんの、最後の役目という意味を持つ、ベールダウンのセレモニー。

お母さんの手でゆっくりベールが下ろされる時、小さく声を掛けてくれた。

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