コイツ、俺の嫁候補。
「そのとーり。準備だけ手伝って試食する前にこっそり抜けようとしたんだけど、縁に会ったから失敗した」

「……悪かったわね」



大口を開けてお好み焼きを頬張る那央に恨めしげな視線を送ると、ヤツは満足げな顔でもぐもぐと口を動かしていた。



「いや、縁が来てくれてよかったよ。料理出来そうだし、これでこの部も安泰だ」

「そんなことは……」

「それに、俺はお前みたいなコが来るのを待ってたんだ」



……どういうこと?

言ってる意味がよくわからず眉をひそめると、那央は意味ありげな笑みをあたしに向ける。



「今日、うち来れない?」

「……はぁ!?」

「食わせてよ、お前の──」



続きの言葉を、那央はあたしの耳に唇を近付けて囁いた。

ふわりとかかる甘い吐息にドキッとして、顔が熱く火照りだす。



「な、何言ってんのよ!!」



むぎゅ、と那央の顔を手で押しのけると、そんなあたし達の様子を見ていた奈々ちゃんが、頬をほんのり桜色に染めて言う。



「先輩達……付き合ってるんですか?」

「違ーーう!!」



全力で否定するあたしを、那央は何故か楽しそうに見ているのだった。


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