コイツ、俺の嫁候補。
もうすっかりなじんだ、黒髪ショート。

強い意志を持つ綺麗な二重の瞳に、愛嬌のある口角の上がった唇。

大好きな彼は、今日は一段と素敵なタキシード姿で、いつまでもあたしをドキドキさせてくれる。


もう手の届く所まで来ると、あたしの手はお父さんを離れ、新郎へ移る。

お父さんに軽く頭を下げた那央は、あたしを見てクスッと笑った。



「……ひでー顔」

「っ!!」



ちょっと! それが花嫁に言うセリフ!?

まぁたしかに涙でぐしゃぐしゃになっちゃってるけど!

ショックを受けたものの、列席者の方に向き直りながら囁かれた一言ですぐに許せてしまう。



「嘘。泣いた顔も可愛いよ」



──あぁ、やっぱり敵わない。

あたしはこんな彼が大好きだ。


これからずっと一緒にいられるなんて、本当に夢みたい。

那央と出逢った日や、想いが通じ合った瞬間、初めてのキスに初めてのデート……

そのすべてを思い出しながら、あたし達は神様ではなく、式に参列してくれた皆の前で永遠の愛を誓う。

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