コイツ、俺の嫁候補。

わずか一時間ちょっとでクラブ活動が終わった後、あたしは那央と一緒に下駄箱に向かって歩いていた。

カレンさんと藤丸先輩は一緒に、もちろんネクラは一人で帰っていき、奈々ちゃんは友達と待ち合わせていると言って教室に戻っていった。

だから、残ったあたし達は必然的に一緒に帰ることになったのだ。



「なぁ頼むよ、縁さん。ここは一つ、人助けだと思って」

「いーやーだ」



大股で歩くあたしの後ろから、那央が両手をポケットに突っ込んでゆったりとついてくる。

さっきのこいつの発言を思い出すと、なんだか身体がむず痒くなってとっても不快だ。



“食わせてよ、お前のカラダ。……じゃなかった、料理”



ただからかわれていただけなのに、不覚にも顔を真っ赤にしてしまった自分も恥ずかしい。

『お前みたいなコが来るのを待ってた』というのは、きっと家政婦的な存在になってくれる人を求めてたってことなんだろう。

今日は那央が料理当番だそうで、あたしに手伝ってもらいたいらしいのだけど。



「俺が出来るのカレーしかないんだよ。いつもそれじゃ皆が可哀想だろ?」

「ルウを変えればシチューもハヤシライスも出来るじゃない」



不満げにぷーと頬を膨らませる那央は知らんぷりして、そそくさと下駄箱へ向かう。

料理は出来るけど、突然大家族の家にお邪魔して皆に料理を振る舞うなんて……やだよフツーに。

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