コイツ、俺の嫁候補。
「ちょっとヘルパーさんとお話があるから、縁は待っててくれる?」

「はーい」

「……縁、縁」



談話ルームを出ていくお母さんを見送ると、おばあちゃんが何故かひそひそ声であたしを呼ぶ。



「ん?」

「縁は高校二年生になったんだろ。どうだい、彼氏は出来たかい?」



何を期待しているのか、おばあちゃんはニンマリと含み笑いしながらあたしを見ている。



「いないよ彼氏なんてー」

「えぇ? じゃあ、あのテニスだかサッカーだかやってるっていう先輩とは何もないのかい?」



あぁそういえば前、樋田先輩のこと話したんだっけ……。

恋バナが大好きなおばあちゃんは、友達みたいな感覚で色々と喋っちゃうんだよなぁ。



「何もないです……」

「なんだ、もったいないねぇ。花の十七歳が恋をしないでどうする! ここにいる私ですらいつも心は乙女だっていうのに」



通り掛かった車椅子に乗るおじいさんに、ぎこちないウインクをしてみせるおばあちゃん。

相手のおじいさんはぽっと頬を赤らめて「やめとくれよ、トメさん~」なんて言いながらも、まんざらでもない様子。

乙女のトメさん、七十歳。どうやらまだまだ現役らしい。

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