コイツ、俺の嫁候補。
*
翌週の水曜日の放課後、調理室へ向かうとすでに那央、奈々ちゃん、ネクラの三人がいた。
「おっす、縁」
「縁先輩! こんにちは」
「やほー」
脱力系那央と癒し系奈々ちゃんに笑顔を返し、中央の一番手前の調理台に座る二人の中にあたしも混ざった。
ネクラは相変わらず一人離れた席に静か~に座っている。
「また例のヤンキー二人組は来ないのかな」
「あいつらは気まぐれで現れるから俺もいつ来るかわかんねぇ。こんなゆるい部活は他にないし、あいつらにとっちゃ都合いいんだろうな」
「ふ~ん。那央も同じ理由?」
「いや、家族のために少しでも家事の勉強しようと思ってさ。マジメなんです、僕は」
見えない眼鏡を上げる仕草をする那央。
家族想いなところは偉いと思うけど、マジメって言葉には引っ掛かる。
「この間途中で抜けようとしてたくせに」
「あれは腹壊しそうな危機を感じたから逃げたんだよ」
「あぁ……そう言われると何も言えないかも」
あたし達の会話を聞いて、クスクスと笑う奈々ちゃん。
そういえば、奈々ちゃんこそ何でこの部に入ったんだろう。
彼女みたいなおとなしそうなコが一人でここに入るのは、ちょっと勇気がいることのような気がするんだけど。