コイツ、俺の嫁候補。
耳にピアスをいくつか付けた短髪ヤンキーは、目と口をぱかっと開けてあたしを見ている。

な、なに!?

あたし別に面識ないんだけど……?



「お、お前……牧野縁か!?」

「え!? 何で知ってんの!?」

「よーく知ってるよ、憎き相手だからな!」



憎き相手だぁ~!?

そんなふうに言われる覚えはない……と思うんだけど?

皆と同じくぽかんとしていると、長めの髪に細目のヤンキーが何かを思い出したように言う。



「陸、もしかしてこいつがあの牧野か?」

「そうだ。忘れもしないぜ、あれは小6の熱い夏の日のことだった……」



斜め上に視線をさ迷わせ、何故か渋い表情と声で語り出す陸というヤンキー。

なにカッコつけてんの、とつっこみたい衝動を抑え、あたしも小6まで記憶を遡らせる。



「俺が必死で捕まえたオオクワガタが、ちょっとした隙に網から逃げ出して、たまたまその場にいた女子のランドセルにくっついたんだ。
その女子が、隣のクラスだったこの牧野縁。驚いたコイツは『ぎゃあぁぁ!!』と叫び声を上げ──」

「あ!!」



思い出した!

虫が大の苦手なあたしは、すぐさまランドセルを放り投げ、元凶となったその男子を……

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