コイツ、俺の嫁候補。
。:*°大家族孝行します!
去年の文化祭で、このカセイクラブはチョコバナナを売っていたらしい。
そんな模擬店があったかどうかも、あたしはまったく記憶にないのだけど。
藤丸先輩によると、カレンさんが『今年はもっと色気のあるものがいいわ』と言っていたとか。
色気のあるものって……と頭を悩ませつつ、陸と海はスマホを弄りながらも一応話し合いには参加していて、皆で意見を出し合った。
たくさんの候補が出たところで、ふいに那央が年季の入ったガラケーを開いて「あ」と声を上げる。
「どうかした?」
「次女からメール。なんか弟が熱出したって」
ありゃ、それは大変。
那央の言葉を聞いていた藤丸先輩は、メモをとっていたノートを閉じて言う。
「ひとまず候補は挙がったし、絞るのはまた今度にして今日は解散しよう。片霧は早く帰ってやれ」
「すいません」
ひょいと肩をすくめて謝る那央に、藤丸先輩はほんの少し表情を和らげる。彼もきっと根は優しいんだろうな。
しかし、「いい仕事したぜー!」と言いながらヤンキー二人が秒速で出ていくと、強面をさらに険しくして彼も調理室を後にした。