コイツ、俺の嫁候補。
ギョッとしながら那央を見やると、ヤツはさっさと居間から繋がる台所へと向かっていってしまう。

翔くんは意味がわかっているのかは定かじゃないけど、「もらうもらう~」と言って笑ってるし、聞き耳を立てていた華ちゃんは……

睨んでる睨んでる! 怖いって!


“キッチン”というより“台所”と言った方が似合うそこへ逃げるように引っ込み、那央の背中をバシンと叩く。



「もう、変なこと言わないでよね!」

「いやー翔の将来が心配だわ……。ホストとかになったらどうすっかなー」

「ちょっと聞いてんの!?」



あたしの言葉を右から左へ受け流している……なんなんだこの男は。

ま、どうせからかわれて終わるだけだから、もう今の発言は聞かなかったことにしよう。


そう思い直して、とりあえずおかゆを作ることにした。

何でも使ってくれと言う那央の言葉に甘えて、うちの何倍も大きい冷蔵庫の中を拝見する。

片霧家にはだいたい余ったご飯が冷蔵してあるらしく、これを使えばすぐに出来る。

栄養もとらせてあげたいし、卵も入れてあげようかな。


準備をしていると、隣であたしを眺める那央の視線に気付く。



「何?」

「女の子がこうやって料理してる姿を見るの、なんか新鮮でいいなと思って」

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