コイツ、俺の嫁候補。
「奥さん、あたし買いますよ! とりあえず全員分……9人か。9パック買います!」

「えぇ!? いいわよ、気遣わなくて!」

「いえ、食料を欲しがる人達がいるんであげようと思って」

「じゃあ廃棄にしてから持っていきなさい!」

「それじゃ意味ないじゃないですか!」



やんややんやと言い合って、結局賞味期限が近いから半額で買うということで話は落ち着いた。

今日は17時までだから、終わったらすぐ那央の家に持っていってあげよう。

いなり寿司もたぶん皆食べれるよね?

びっくりするかな、あのコ達。


皆の喜ぶ顔を想像しながら発注を再開すると、ドアが開いてお客さんが来たことを知らせる呑気な音が鳴った。



「いらっしゃいませー、こんにちはー」



発注のディスプレイに目を落としたままいつもの挨拶をする。

パックのジュースの前にいたあたしの隣にそのお客さんがやってきて、すぐに退こうとした、その時。

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