コイツ、俺の嫁候補。
くっついて仲良さそうに喋る二人は、明らかに友達以上の関係のはず。

さっきの会話で、二人は待ち合わせをしていたんだってこともわかるし。

やっぱりこの人は、先輩の彼女……?



「じゃあね、牧野さん。バイト頑張って」

「あ……はい」



キラキラスマイルで手を振られても、もう胸のトキメキは何も感じられず、あたしは気の抜けた返事をして彼らを見送る。

なにあの二人……めちゃくちゃお似合いなんですけど。

モデル同士のカップルとして雑誌に出てきてもおかしくない。


華やかな二人がいなくなると、途端に虚しさが襲ってくる。

あんなに綺麗な彼女がいるなら、好きになろうが諦めようが、あたしがどうしようと最初から関係なかったんだ。

やっぱりあたし、先輩のこと何もわかってなかったんだ──。


店内に流れる流行りのラブソングが、虚しくあたしの耳にこだましていた。


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